レポート

アナリストレポート第5回
「祝Bリーグ開幕!バスケの結果を彩るスタッツの楽しみ方!」

2018年10月01日 バスケットボール

バスケットボールアナリスト:柳鳥亮

私はバスケットボールアナリストとして、様々な試合のスタッツを見ておりますが、バスケのスタッツは項目が多く、馴染みのない方にとってはなかなか読み解くのが難しいのではないかと感じています。

そこで、今回は普段私が試合のスタッツのどの項目をどういった観点で見ているのかを、9/17に行われたW杯2次予選日本対イラン戦のスタッツを例にしながら紹介していきます。

バスケットボール小

 

1.得点に大きな影響を与える「シュート成功率」

まず最初に注目するのはシュート成功率(FG%:Field Goal %)です。
試合の勝敗を決するのは得点で、得点に大きな影響を与えるのがシュート成功率だからです。日本対イラン戦では日本は成功数25本/試投数58本だったので、シュート成功率は25/58=43.1%でした。
対するイランは成功数22本/試投数65本で、FG%は22/65=33.8%です。日本はシュートを確率良く決めたことで、イランより多く得点を取れたと言えます。

 

もう少し細かく見ていくと、2ポイント(2P)シュートは日本が23/47= 48.9%で、イランが16/42=38.1%。3ポイント(3P)シュートは日本が2/11=18.2%、イランは6/23=26.1%でした。2P成功率では日本、3P成功率ではイランが上となりました。
2Pと3Pの成功率が出てくると結局どちらのチームの成功率が良かったのか分からなくなってきますが、そんな時に便利なのがeFG%という指標です。
公式は「(2P成功数+1.5×3P成功数)÷シュート試投数」です。3Pシュートが成功すると2Pシュートより1.5倍の得点が入ることを加味して算出するFG%ということで、Effective Field Goal%と呼びます。

 

アナリスト界でよく使われるこの指標で比べると日本が44.8%、イランが38.5%でした。3Pシュートの得点を加味して比較しても、やはり日本が高確率でシュートを決めていたことが分かります。

 

(表1)シュート成功率

シュート成功率

 

 

2.シュート数に直結する「ターンオーバー」と「オフェンスリバウンド」

さて、シュート成功率では日本が上回りましたが、続いて注目したいのがターンオーバー(TO)とオフェンスリバウンド(OREB)です。

なぜこの2つの項目かというと、両者がシュート試投数に直結する数値だからです。バスケットボールではシュートが決まれば強制的に相手にボールの所有権が移るため、攻撃の機会は両チームに均等に与えられていますが、シュート試投数は同じにはなりません。
なぜなら、シュートを打つ前にボールを失ってしまうこともあれば、シュートが外れてからOREBを取ることで、もう1回シュートチャンスが訪れることもあるからです。

 

この「シュートを打つ前にボールを失ってしまう」ことをTOと言い、バスケットボールのスタッツの中では珍しく値が小さい方が良い項目です。TOを減らし、OREBを増やせば、相手よりもシュート試投数が増え、例え成功率が相手より低くてもシュートの量に物を言わせて勝利することも可能です。

 

では、日本対イラン戦の数値を見てみると、TOは日本が9でイランが16、OREBは日本が12でイランが18でした。TOの少なさでは日本が7の差をつけ、OREBの多さではイランが6の差をつけています。
日本は高さ・フィジカルで有利と見られていたイランにOREBでは差をつけられたものの、代わりに好ディフェンスでイランのTOを増やすことでこの差を埋めることができたと言えます。

 

(表2)ターンオーバー(TO)数とオフェンスリバウンド(OREB)数TOとOREB

 

 

 

3.高確率で点数を取るチャンス「フリースロー」

さて、ここまで読んで疑問に思われた方もいるかもしれません。「ターンオーバー(TO)とオフェンスリバウンド(OREB)の差を合計すると日本が1多いのに、シュート試投数は日本が58本で、イランが65本。どうしてイランが7本も多くなるの?」と。

 

このギャップを生んでいるのが実はフリースローです。日本対イラン戦では、日本のフリースロー成功数(FTM)18本/フリースロー試投数(FTA)27本、イランのFTM6本/FTA10本となりました。FTAで比較すると実に17本も日本が上回っているのです。

 

フリースローは基本的に相手がファウルをした場合に与えられるもので、2Pシュートへのファウルであれば2本、3Pシュートへのファウルであれば3本、さらにシュートファウルを受けながらシュートが決まった場合は、シュートの得点が認められたうえで、さらにフリースローが1本与えられます。
さらに、1つのクォーターでのチームファウル数が4回を超えると、5回目からはシュートファウルでないファウルでも2本のフリースローが与えられます。

 

シュートファウルを受けてフリースローとなった場合はシュート試投数にはカウントされないため、日本はフリースローが多い分、シュート試投数が少なくなっているということです。
前述の通り、フリースローが与えられる本数には様々なパターンがあるため、単純に計算はできませんが、フリースローが全て2Pシュートへのファウルだったと仮定して、17本多かったフリースロー試投数をシュート試投数に置き換えてみると、17÷2=8.5本分だったことになり、7本というシュート試投数の差とだいたい同じになります。

 

フリースローはディフェンスに邪魔をされずにシュートを打つことができ、高確率で点が取れるチャンスなので、この数字の違いも注目したいポイントです。ちなみに今回の日本対イラン戦は最終的に日本が14点差をつけましたが、フリースローでの点数は日本が12点上回っており、この点差がほぼそのまま試合の点差となっており、その重要性がうかがえます。

 

(表3)フリースローの数と成功率フリースロー

 

 

 

4.チームバスケットの判断材料になる「アシスト」

その他ではアシストも注目したい項目です。細かい規定はありますが、簡単に書くとアシストは「シュートに直結したパス」につく記録です。

 

チームプレーで点を取ればアシストは増えやすく、個人技で点を取ればアシストは増えにくくなります。どれだけチームバスケットができていたかの判断材料になる項目です。

 

日本対イラン戦では日本が13、イランが9でした。ただ、アシストはそもそもシュートが成功しないと記録されないため、シュート成功数が少ないチームの方が少なくなるのはある意味当然で、この点を考慮して見る場合はAST%という指標が有用です。
公式は「アシスト数÷シュート成功数」で、成功したシュートの何割にアシストがつくかという指標ですが、この値を比較しても日本が52%でイランが41%と、やはり日本の方がチームバスケットができていたという結果です。

 

(表4)アシスト数とアシスト率アシスト

 

 

 

5.ディフェンスを判断するには相手スタッツから

また、ディフェンス面で注目したいのは相手チームのFG%とTO数です。
ブロックとスティールというディフェンスプレーに関する項目もありますが、これらの数値の大小だけでディフェンスを評価するのは困難です。なぜなら、厳しいマークでシュートを打たせず、24秒バイオレーション(攻めているチームは24秒以内にシュートを打たなければいけないルール)を誘ってボールを奪う、相手に難しいシュートを打たせて落とさせる、といった好ディフェンスがブロックとスティールには現れないからです。

 

こういったプレーが反映されるのが相手のFG%とTO数ですが、これらを自チームの数値と比較する、あるいはデータがあれば相手チームの平均値と比較してみると、良いディフェンスができているかの判断材料になるでしょう。

 

6.まとめ

いかがだったでしょうか。限られたシュートチャンスで得点を増やすために大事な「シュート成功率」、シュートチャンスを増やすために大事な「ターンオーバー」と「オフェンスリバウンド」、高確率で点が取れるチャンスである「フリースロー」、チームバスケットが出来ていたかの指標になる「アシスト」、そしてブロックとスティール以外からディフェンスを評価する方法について紹介させて頂きました。

3シーズン目が開幕したB.LEAGUEでも、公式HPで各試合の詳細なスタッツを公開しています。今までスタッツはチェックしてこなかった方も、今シーズンはスタッツを横目で見ながらB.LEAGUEの試合を観戦してみてはいかがでしょうか。

 

★B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイトはこちら(外部リンク)

※参考 FIBA.basketball
http://www.fiba.basketball/basketballworldcup/2019/asian-qualifiers/game/1709/Japan-Iran#tab=overview

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