レポート

アナリストレポート第17回
「SAJ2020登壇で感じたスポーツアナリティクス界の次の一歩」

2020年02月21日 サッカー

サッカーアナリスト: 久永 啓

 「革命の入口に立つもの」― ― 2018年6月10日の日本経済新聞にて、試合中にベンチへの電子通信機器の持ち込みが可能になったサッカー競技規則の改定について、このようなコメントが掲載されました。

 サッカー界で、いわゆる”リアルタイム分析”が解禁になってから2年が経過しようとしていますが、日本のサッカー現場において、この”革命の入口”はどのようなものだったのか、その入り口の先には何が見えてきたのか。2020年2月1日に開催されたスポーツアナリティクスジャパン2020(SAJ2020)では、「リアルタイム分析はピッチ上の意思決定にどのような影響を及ぼすのか?」と題して、各世代の日本代表の分析を担ってきた日本サッカー協会 テクニカルハウスリーダーの片桐央視氏と、統計家でデータ分析に精通する株式会社データビークル 代表取締役最高製品責任者 西内啓氏とディスカッションをさせていただきました。

▼リアルタイム分析の本質

 2018 FIFAワールドカップロシア大会では、試合中にスタンドにいるアナリストからベンチのスタッフへ、タブレットを通じて情報(画像・プレーデータ・トラッキングデータ)を提供できるようになりました。これは大会側が全参加国に対して準備したもので、これ以降の各カテゴリーのFIFAワールドカップやAFCアジアカップ等でも同様に、映像やデータが提供されるようになっているようです。

 国内に目を向けると、2019明治安田生命J1リーグでは「LIVE SCOUTER」というリアルタイム分析ツールが各クラブに導入されました。独自に準備したツールを利用するクラブもあるようでしたが、基本的に何らかの形でこの競技規則改正によるメリットを活用するというのが、トップレベルでの現状と言えるでしょう。

 主な活用方法としては、試合中に情報を収集して、ハーフタイムにそれを監督や選手に提供することが多いようですが、今後は、実際にプレーが行われている最中に、リアルタイム分析を駆使して情報のやり取りをするチームが増えていくのではないかと感じています。そのためには、リアルタイム分析によって何が変わり、どのような効果があるのかを正しく理解することが必要になります。テクノロジーの進歩が著しいなかで、使用する最新の分析ツールや収集されたデータ自体に注目が集まりがちですが、あくまでそれは手段です。その本質は、即時の情報取得と提供によって、最適な意思決定に必要な判断材料の質が格段に上がることだと考えます。セッションでは、片桐さんから「最新技術を使う能力より、効果的に使う能力の方が重要」というコメントもありましたが、リアルタイム分析のこの本質を正しく掴んで活用していける力が、競争優位性を生み出すのではないでしょうか。

▼学生の熱量

 セッション終了後には、学生の方々とお話しをする機会がありました。これからサッカー部で分析を始めていきたいという高校生、先輩アナリストの後を継いで部活で分析を続け、プロのサッカーアナリストを目指したいという大学生、留学して指導や分析を学びながら今後のことを考えたいという大学生、テニスの現場で経験を積んでいる大学院生。私がお話できた方以外にも、多くの学生の方々が今回のSAJ2020には参加されていたようです。そんな姿を見ていると、これからのスポーツアナリティクス界が楽しみになってきました。

 それと同時に、彼・彼女たちがもっと力をつけて活躍できるようになる場が必要であると強く感じました。もちろん、学生の方自身の頑張りは必須なのですが、その過程で大きなロスなく目指すものに近づけるような、努力の方角と道のりを示すことは、先にアナリストを名乗って活動している我々の役目だと思います。具体的に現時点で必要なのは、体系的にアナリティクスのスキルを上げていけるような仕組みを作ること、相互のレベルアップを図れるような健全な競争のある環境を整備することではないでしょうか。この辺りについては、個人的なイメージと趣味で恐縮ですが、私が好きな漫画のなかに登場する、ヒーローを目指す高校生たちが競い合う様子を見た先生同士のコメントをご紹介します。

「おまえのクラスすげえな!!どういう教育してんだ!」
「俺は何もしてねえよ。奴らが勝手に火ィ付け合ってんだろう。」
※集英社 2015/4/3 「僕のヒーローアカデミア」(著)堀越耕平 第3巻より

▼2020年は

 「革命」とかいうパワーワードを使った自分としては、こんな関係が生まれる場を実際に提供できるように、取り組んでいきます。さらには、トップレベルだけでなく、より多くの人がスポーツアナリティクスに触れ、もっとスポーツを楽しんでいけるような、「スポーツアナリティクスの民主化」にも力を入れていきます。

 今後もよろしくお願いいたします。

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