レポート

アナリストレポート第28回
「データから見る男子卓球と女子卓球の違いとは?」

2021年06月15日 卓球

 はじめまして。データスタジアムデータセンター事業部の山内保幸です。データスタジアムでは、野球をはじめサッカー、バスケットボール、ラグビーなど様々なプロスポーツのデータを取り扱っています。中でも日本における卓球のプロスポーツ、Tリーグにおいては、男女ともにデータの蓄積、配信を行っており、今回は男子卓球と女子卓球の違いについて、Tリーグ3年分のデータからピックアップして見ていこうと思います。

 卓球にあまり触れたことがない方にとっては、男子と女子のプレーの違いについて想像がつきにくいのではないでしょうか。卓球は他球技に比べてボールが小さく、軽いのでパワーの差が出にくいように感じます。経験者には、男子は台から距離をとって威力のあるボールで、女子は打点を早くし台上付近で、という印象があるかと思います。これらは、あくまでも漠然としたイメージで、数値的にはどのような違いがあるのでしょうか。

 比較項目は、『試合時間』『ラリー数』『バウンド位置』を取り上げました。まずは試合時間について見ていきます。

 一貫して男子が女子よりも試合時間が長い、という結果になりました。ただ、これだけでは消化ゲーム数が少ないだけ(決着が早くついている)か、プレー時間が短いのか区別がつかないので、更にゲーム時間(1セットの時間)までクローズアップします。

※2020-2021シーズンにおけるマッチ出場数10以上の選手を抜粋

 全体的に、男子はゲーム時間(1セットの時間)が長く、女子は短いという傾向が出ています。また、張本選手や石川選手などトッププレイヤーは競った試合展開が少ないため、ゲーム時間が短いという結果になりました。

 続いてラリー数に焦点を当てて比較をしていきます。

※横軸…ラリー数、縦軸…出現回数
※過去Tリーグ3年分(シングルスのみ)

※横軸…ラリー数、縦軸…(男子のラリー数出現割合)-(女子のラリー数出現割合)

 1枚目の青いグラフの図は男子のラリー数の出現回数、2枚目の黄色いグラフの図は女子のラリー数の出現回数を示しています。注目したいのが3球目で、男子は全体の22.5%、女子は20.7%を占めています。

 3球目でプレーが決まる割合が高いのは男女に共通していますが、3枚目のグラフで示した通り、男女間でその出現割合を比較すると男子の方がよりその傾向が強くなっていることが分かります。男女を通じて最も出現する割合が高いのは3球目である一方、男女で最も出現割合で差が付きやすいのも3球目ということになります。

 卓球はサーブから相手のレシーブを受けて3球目で強打することが基本の戦法であり、男子の方が力強く回転量の多いショットを繰り出すケースが多いことから、ラリー数3の出現回数が多くなっていると推測できます。ちなみに、平均ラリー数は男子が3.90、女子が4.34でした。

 最後にバウンド位置について、見ていきましょう。今回は決定打(得点者が最後に打ったボールのコート内における着弾点)を『バウンド位置』としています。また、コート内は左右前後エリアから更に細分化していけますが、前後位置のみ着目します。

※ラリー数1回~10回を抜粋

 得点した最終打球の内、全体の8割から9割がネットから離れた地点でのバウンド位置となりました。これは男女に共通しています。全体的に男女にほぼ差はないですが、1球目(サーブで得点したプレー)のバウンド位置は、他ラリー数の差が3%以内に対して、10%以上の開きがありました。

 この結果は、男子の方がショートサーブで得点する機会が多い、裏を返すとロングサーブでの得点機会が女子より少ないことを示しています(明確にネット際=ショートサーブ、選手側=ロングサーブではないですが)。これは先述したように強打した際の威力の差が影響していると思われます。相手の意表をつくロングサーブはここぞという場面で使用すると効力を発揮しますが、ロングサーブばかりで勝負していては相手選手から狙い打ちで強打されてしまいます。この10数%の差の一因として、ロングサーブのリスク差があると考えられます。

 今回取り上げた比較結果の中で『試合時間』に関しては、男女各々のリーグ内実力差にも関わる部分なので、一概に次シーズンもまた同じ結果になるとは限りません。

 次シーズンからは女子の新規チーム参入も公表されており、より一層の盛り上がりを期待してこれからもTリーグを楽しんでいただけたらと思います。

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