レポート

アナリストレポート第30回
「日本サッカー分析の最前線。これからのサッカー界に求められるアナリストとは?【スポーツアナリスト育成講座レポート】」

2021年08月13日 サッカー

 データスタジアムフットボール事業部の高橋です。当社では、現場で活躍できるアナリスト人材の育成を目的に2017年5月より「スポーツアナリスト育成講座」を開講しています。Vol.7となる今回は、「これからのサッカー界に求められるアナリストとは」をテーマに、アナリストに求められる能力・スキル、サッカーの分析などについて、第一線で活躍するゲストにお話しいただきました。

■分析以前にやるべきことがある

 第1回は元ベガルタ仙台トップチームコーチの小坂雄樹氏に「Jリーグトップチームの分析」についてお話しいただきました。横浜F・マリノス、浦和レッズ、ベガルタ仙台などJリーグトップチームコーチとしてどんな分析をされてきて、何を大切にしてきたのか、実際に選手へのプレゼンで使用したという資料をもとに説明いただきました。分析する際は映像に映る現象にとらわれるのではなく、なぜそのプレーなのか、再現性はあるかといった要因を探ることを意識しているそうです。

 一方、約20年弱コーチとして第一線で活躍されタイトル獲得に貢献してきた小坂氏は分析以前にするべきことがあると言います。それは、「アナリストとしてではなく人と人との信頼関係を創ること」。いくら正しい分析をしても選手やスタッフに伝わらないと意味をなしません。相手の気持ちを考え、こちらを向いてくれるような工夫を常に行うことが大切であるという話が印象的でした。

■プロと育成年代の違い

 第2回は大宮アルディージャU15コーチの横谷亮氏に「育成年代のサッカー分析」についてお話しいただきました。トップチームコーチ、育成年代コーチの両方を経験してきた横谷氏は、プロと育成年代の分析の違いを「目的の割合の違い」と話していました。目の前の相手にいかに勝利するか、目の前の選手がいかに成長するか、どちらか一方だけを追い求めるのではなく、そのぎりぎりのバランスを考えることが育成年代では重要だそうです。例えば相手FWの枚数に合わせて自分たちの立ち位置を指導者が意図的に変えてしまうことで、選手は枚数を変えることでしかビルドアップできなくなるおそれがあります。目的に応じて目の前の勝利ではなく、選手の成長を第一に考えることが求められると話していたのが印象的でした。

 そのほか第1回と共通している点は、分析は選手に伝わらなければ意味がないということ。選手の考えを引き出したうえで、問いかけたり意見を伝えるといった工夫を意識されているとのことでした。

■日本と世界の違いと共通点

 第3回では日本サッカー協会テクニカルハウスリーダーの片桐央視氏に「代表各カテゴリーのサッカー分析」についてお話しいただきました。JFAテクニカルハウスの役割は四位一体(強化、ユース育成、指導者養成、普及)に分析や映像作成を行うことだそうです。

 片桐氏はロシアW杯など世界で戦う日本代表を分析面で支えてきました。そんな片桐氏が語る日本と世界の違いは「分析に対する捉え方」、「進歩の速さ」。ヨーロッパのクラブは、テクノロジーやデータに対してまず導入して、その中から良いものだけを選別していくというマインドのため、進歩のスピードが速いのだと話していました。

■GM視点でのアナリストやサッカー分析

 第4回では水戸ホーリーホック取締役、GMの西村卓朗氏に「プロクラブを創るためのサッカー分析」についてお話しいただきました。第1~3回とは異なり、強いチームを創るという強化部視点での分析がテーマ。講座の中では水戸ホーリーホック独自の取り組みであるMake Value Projectや、選手による課題設定、選手編成・評価におけるデータ活用などを実際の資料をもとにご紹介いただきました。

 その中で個人的に印象に残っているのが、「一貫性」というワード。

 アナリストはその一貫性の担保に関わり、可視化されたもの、定量化されたものでチームを導くために求められるようになっていくだろうとのこと。「チームを強くする、創る」ためにアナリストが必要であることを実感できた回だと感じました。

■分析で大切なこと

 第5回は元データスタジアムサッカーアナリストでスポーツアナリスト育成講座を開講した久永啓氏にお話しいただきました。久永氏は参加した学生に、アナリストになるために現場に関わり、その中でサッカー分析をして、選手やスタッフに伝える経験をすることをおすすめしていました。「分析において重要なのは“正しい分析をすること”ではなく、“選手が自信をもってピッチに立つこと”である」と久永氏は強く話されていました。ピッチで意思決定する選手または監督が最適な判断をできるようにアナリストは心掛けることが大切だということを改めて感じました。

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 Vol.7ではアナリストになりたい学生から現場を持つ指導者や一般の方まで幅広く、サッカーへの関わり方も異なる皆さまに参加いただきました。

 全5回、「これからのサッカー界に求められるアナリストとは」をテーマに開催して参りましたが、それぞれの活動に活かせるヒントや学びを得ていただけたら幸いです。今後の参加者の皆様のご活躍を期待したいと思います。

■受講生の感想(アンケートより抜粋)

・全5回の講座を参加して現場で活動しているアナリストの方のリアルな話や、アナリストになるために必要なことなど、具体的に聞くことができてとても良かったです。

・テクノロジーを使えるかどうかの重要性について学べたことがとてもためになりました。

・サッカーではなく、フットサル関係者ですが、全ての競技クラブで参考になる話だったと思います。

・まずは自分で分析をしたり、行動にうつせていけたらと思います。

・強化部の目線から分析をどう捉え、選手を評価しているのか、貴重な話が聞けた。

・普段聞けないような話を聞くことができて満足でした。また、サッカー理解のことや、伝える上で大切なことなど聞けて、すごくためになりました。

チーム・クラブ・学校などでのアナリストのスキルアップや体制作りに向けた出張講座等も対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

■お問い合わせ先
データスタジアム株式会社
担当:高橋、藤
E-Mail:analyst_lp@datastadium.co.jp

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