レポート

アナリストレポート第31回
「黒木知宏さんと考えるトラッキングデータの活用【第2回Rapsodo活用セミナーレポート】」

2021年10月01日 野球

 データスタジアム・野球アナリストの河野です。現在野球界ではプロを中心に、多くの選手がトラッキングデータを測定できるようになってきており、当社ではそのトラッキングデータの活用方法に関するセミナーを定期的に開催しています。第1回では、Mac’s Trainer Roomで野球トレーナーとしてご活躍している高島誠さんをお招きしました。プロ野球選手やアマチュア選手を指導するにあたり、Rapsodoをどのように活用しているかなど、トレーナー目線でのお話が中心でした。第2回となる今回は、指導者、そして解説者としてトラッキングデータに深く関わっている、元プロ野球選手の黒木知宏さんにお話をしていただきました。

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■トラッキングデータとは?

 トラッキングデータとは、簡単に言うとカメラやレーダーを用いて、人間の目では測れないものを数値化したデータです。代表的なものとしては、投球されたボールの、回転数、回転方向、回転効率、変化量といったデータがあります。また、打球においても、打球速度、打球角度、打球方向といったデータが取得できます。

 こういったデータを取得するメリットとしては、「プレーの結果の要因を客観的、かつ定量的に知ることができる」という点にあります。トラッキングデータが登場する以前は、ある投手がストレートで多く空振りを奪えるという特徴があった際に、なぜ空振りを多く奪えるのかが具体的には分かりませんでした。それが、トラッキングデータの普及によって、ある投手のストレートは一般的なストレートよりもホップ成分が〇cm多いから空振りを多く奪えるといったように、客観的な数値でプレーの要因を解明することができるようになってきました。

 このように、トラッキングデータを活用することで、今まで感覚でしかわからなかったことが、客観的な数値で分かるようになってきています。今回のセミナーでは、「現在地を知る」、「目的地を設定する」、「目的地に向かう」という3つのテーマでトラッキングデータの活用をさらに深掘りしました。

■現在地を知る

 トラッキングデータを活用する上でまず最初にやるべきことは、「現在地を知る」ということです。これは言い換えると、自分が今どういうボールを投げているのかを客観的なデータで知る、ということになります。

 実際にトラッキングデータを見たプロ野球選手の感想の中には、「自分が感覚的に認識していたボールの回転や変化と、実際に測定されたデータではギャップがあった」といったものがありました。セミナーの中でも、黒木さんが実際にRapsodoを使って測定したときの体験談を語っていただきました。黒木さんとしては、測定前までは回転方向が垂直方向のきれいなバックスピンのストレートを投げているつもりが、実際の測定データではかなり回転方向が傾き、ボールにシュート回転がかかっていて、自分の感覚とかなりギャップがあったとおっしゃっていました。このように、プロ野球選手でさえ自分の感覚とのギャップがあるということは、アマチュア選手においてはさらに大きなギャップがあることは容易に想像することができます。

 自分の感覚とのズレが大きい場合、プレーにも大きな弊害が出てきてしまいます。例えば、ある投手が自分のストレートは球速が速く、空振りを多く奪えると思っていたが、実はホップ成分が少なく、空振りを奪いづらい球質だったとします。その場合、三振が欲しい場面でストレートを多投してしまい、その結果空振りを奪えず、フェアグラウンドに打球を飛ばされる、といったことにつながってしまいます。したがって、まずは自分が今どういうボールを投げているのか、ということを客観的なデータで知ることが大切になります。

■目的地を設定する

 続いては、「目的地を設定する」というところですが、これは最終的に自分がどういうボールを投げたいかというゴール設定になります。例えば、自分のストレートの現在地が、シュート成分が大きく打たせてとるタイプだが、最終的にストレートで空振りが奪えるようなボールにしたいとします。その場合、回転数や回転効率、回転方向などを修正し、よりホップ成分を大きくする、といったように、具体的な数値でゴール設定をすることができます。従来では、感覚で努力する方向を定めていたものを、トラッキングデータを使うことによって、具体的な数値で現在地とゴールの差を測ることができるため、より効率的で、かつ正しい方向に練習をすることができます。

 これに関連して、黒木さんは継続してデータを計測していく重要性についても言及していました。継続的に計測することによって、自分の調子の良い時、悪い時の数値を残しておくことができます。そうすると、調子が悪くて打者を抑えられないといった際に、自分の調子の良い時のデータと比較して何が違うかをいち早く発見し、改善につなげることができます。

 このように、自分のゴール、今回の例で行くと、自分の投げたいボールや、調子の良い時のボールの具体的なデータがあれば、効率的なレベルアップ、不調からの早期脱却につなげることができます。

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■目的地に向かう

 最後に、「目的地に向かう」というお話です。これは、自分の現在地から設定したゴールに向かって、どのような練習をして改善していくかということです。

 練習の方法としては、まず投球練習が挙げられますが、黒木さんは全力で投げるだけではなく、出力を落として、ネットスローのような形で投げることも大切とおっしゃっていました。ボールの回転効率が低いことが課題だった場合、出力を落とした状態で計測をすると数値が改善することがあります。まずは出力を落とした状態で繰り返し練習し、そこから徐々に全力投球とのギャップを埋めていくことで、数値を改善していく、というアプローチです。このほかにも投球の映像と数値を一緒に確認していくことで、どういう投げ方をしたときに、良い数値、悪い数値が出るかが分かるようになる、といったこともおっしゃっていました。

 このように、目的地に向かうための練習として、特別な練習があるわけではなく、地道な練習を継続していくことが、最も大切ということが分かります。

■まとめ

 今回は、先日のセミナーでお伝えした、トラッキングデータの活用に関する3つのテーマ(「現在地を知る」、「目的地を設定する」、「目的地に向かう」)についてご紹介しました。現状では、まだまだプロやトップアマチュアの選手が中心にはなっていますが、自身の感覚と実際の数値にズレが生じやすい育成年代の選手こそ活用するメリットが大きいと考えています。様々なカテゴリーの選手、指導者がトラッキングデータを正しく活用できるように、当社としても引き続きセミナーなどを通じて、 情報発信をしていきたいと思います。

 セミナー等の開催情報はホームページTwitterFacebookなどで随時お伝えしてまいりますので、よろしければ上記アカウントのフォローをよろしくお願いいたします。

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